旅館・ホテルを廃業するには?手順や費用、建物を活かす方法まで解説【民泊プロデューサー監修】

かつて地域を支えてきた旅館やホテルが、いま大きな転換期を迎えています。近年は倒産だけでなく、経営判断による休廃業も増えており、人手不足や後継者不在といった従来の運営が難しくなっています。
一方で、完全に廃業するには解体費や手続きなどのコストもかかります。そこで注目されているのが、建物をそのまま活かして民泊など他の事業に転用することです。
本記事では、旅館・ホテルの廃業手続きや費用、廃業後の活用方法について、これまで多くの民泊を手がけてきたプロデューサーの視点から解説します。
なぜ廃業旅館・ホテルの利活用が注目されているのか
インバウンドによりニーズが高まる観光業界ですが、廃業する旅館やホテルが増えています。まずはデータが示す業界の実態と、オーナーたちが廃業や利活用を選ぶ理由を見ていきましょう。
データで見る業界の現状(2025年統計)

出典:株式会社帝国データバンク:「宿泊業」の倒産・休廃業解散動向(2025年)
帝国データバンクが2026年2月に発表した調査によると、2025年の宿泊業の退出は267件でした。
内訳を見ると、「倒産」よりも経営判断による「休廃業・解散」が178件と多く、倒産の約2倍にのぼっています。

出典:厚生労働省「令 和 6 ( 2 0 2 4 )年 度 衛 生 行 政 報 告 例 の 概 況」
一方で、厚生労働省の統計では、旅館・ホテルの施設数は増加傾向にあります。つまり、新しく参入する事業者がいる一方で、古くからの宿が姿を消すという、入れ替わりが同時に進んでいることがわかります。
こうした状況から、宿泊の需要は高いものの、すべての施設が継続できるわけではなく、廃業や利活用といった選択が広がっているといえます。
旅館・ホテルが「廃業」「利活用」を選択する理由
旅館やホテルの廃業が増えている背景には、昔ながらの経営スタイルと現在の旅行ニーズとのズレがあります。
かつて主流だった団体旅行向けの「1泊2食付き」のスタイルは少なくなり、個人旅行や短期滞在、体験重視の旅行へとニーズが変化しているためです。
また、民泊の普及や新規ホテルが増えたことにより競争は激化。設備投資やリニューアルが難しい施設では収益の維持が難しくなっています。
さらに、人手不足や採用難、後継者不在といった課題も重なり、廃業や売却をせざるを得ないケースが増えているようです。
一方で、建物や土地を活かす選択肢も広がっています。M&Aによる事業承継や民泊、他業種への転用など、形を変えて事業を続ける動きも見られます。
旅館業の廃業手順と費用

旅館やホテルの廃業は、単に営業を停止するだけでは完了しません。営業を終了する場合はもちろん、売却や他業種へ転用する場合であっても、旅館業の廃止手続きが必要になります。
また、従業員や取引先、設備・建物の処理など、さまざまな対応を進める必要があります。
ここでは、旅館業の廃業手続きの流れと費用について解説します。
廃業手続きの流れ
廃業をスムーズに進めるためには、法的な手続きとともに、現場の整理を段階的に進める必要があります。
廃業日の3〜6ヶ月前には方針を固めましょう。従業員への通知、取引先への連絡、宿泊予約の停止および予約客へのキャンセル対応を行います。
備品の売却・廃棄、リネンや食材の在庫整理を進めます。あわせて電気・ガス・水道などのインフラ契約、保守点検契約などの解約手続きを行いましょう。
廃止後、速やかに各行政機関へ書類を提出します(詳しくは下記の「届け出先」を参照してください)。
法人の場合は解散登記と清算結了手続きを行います。個人事業主の場合は廃業届を提出し、最終的な確定申告を済ませれば完了です。
届け出先
廃業届の必要書類と主な届け出先は以下の通りです。
- 保健所:旅館業廃止届(廃止から10日以内)、営業許可証の返納
- 消防署:防火管理者解任届、消防用設備等休止届
- 税務署:個人事業の廃止届出書、給与支払事務所等の廃止届出書
- 年金事務所・ハローワーク:社会保険・雇用保険の資格喪失手続き、離職票の発行
- 法務局(法人の場合):解散登記、清算人選任登記
旅館やホテルの廃業にかかる費用
旅館やホテルの廃業には、想像以上に費用が発生します。特に建物の解体までする場合はコストがかなりかかるため、決断をする前に詳細な見積もりと資金計画をしっかり立てておくことが大切です。
| 項目 | 具体的な内容 | 金額の目安 |
|---|---|---|
| 設備・建物解体処分費 | 建物本体の取り壊し費用。構造(木造・RC造)や立地、周辺環境により大きく変動します。 | 坪単価 3万〜10万円 (大型施設は億単位も) |
| 原状回復費用 | 借地やテナントの場合、更地に戻して返還するための費用(民法第599条に基づく)。 | 坪単価 3万〜10万円 |
| 解散・清算結了登記 | 法人を閉じるための登録免許税や、司法書士への手続き代行報酬。 | 約4万〜10万円 |
| 官報公告掲載料 | 債権者保護の手続きとして、法令により義務付けられている官報への掲載費用。 | 約3万〜4万円 |
| 専門家への報酬 | 最終的な確定申告を行う税理士や、複雑な清算業務を依頼する弁護士への報酬。 | 数十万円〜 |
| 従業員関連費用 | 就業規則の規定に基づく退職金や、解雇予告手当(30日前までの告知が困難な場合)。 | 規定・人数による |
このように、単に「営業を止める」だけでも、法的な手続きや原状回復のために多くの費用が必要です。
特に解体費や原状回復費の負担は重く、更地にするために手元の資産を大きく減らしてしまうケースも少なくありません。こうした「廃業コスト」をできるだけ抑え、資産を守る方法として、建物をそのまま活かして再生する「利活用」が注目されています。
廃業旅館・ホテルの活用方法

旅館やホテルの廃業後は、建物や立地をそのまま活かしながら、さまざまな形で再活用することが可能です。
例えば、以下のような活用方法があります。
- 民泊として再生する
- 売却・譲渡する
- 他業種へ転用する
- 賃貸として貸し出す
詳しく見ていきましょう。
民泊として再生する
旅館業の許可を維持したまま、運営スタイルを民泊へと転換することが可能です。既存の許可を活用することで、年間365日の稼働が可能となり、収益アップも期待できます。
スマートチェックインを導入して無人運営を実現すれば、人手不足の課題を抑えつつ、プライベートを重視する現代の旅行ニーズにも対応できます。
既存の権利を有効活用することで、初期コストを抑えながら再スタートを切ることができるでしょう。
売却・譲渡する
施設の売却・譲渡は、土地や建物の価値を活かせる選択肢の一つです。早期に資金化できるうえ、長期放置による資産の劣化も避けられます。
法人ごと譲渡するM&Aや居抜き売却であれば、建物や雇用をそのまま維持しながら早期の事業再開が期待できます。
更地にして売却する場合は、住宅地としての再開発など、次の活用の幅が広がります。ただし、解体費用は規模や構造によって数千万円規模になることもあるため、事前にしっかりと試算しておくことが大切です。
他業種へ転用する
建物の設備を活かし、宿泊以外の用途へ転換する方法もあります。健康・医療・ビジネス分野など、生活インフラに近い領域は一定の需要が見込まれるでしょう。
例えば以下のような活用事例があります。
- ウェルネス施設:個室フィットネスや大浴場を活かしたサウナ施設など
- 公共・医療施設:市営スポーツ施設や検診センターへの転用
- 多目的利用:オフィス、住宅、医療モールなど立地に応じた複合用途
既存建物を壊さずに活かすことで、地域経済への波及効果も期待できます。
賃貸として貸し出す
建物を賃貸物件へ転用するという選択肢もあります。宿泊需要に左右されず安定した賃料収入を得られるほか、移住者向けの住宅として活用できます。
シェアハウスや寮として活用すれば、客室をそのまま個室に、ロビーや厨房を共用スペースとして使うことで、交流の生まれるコミュニティ型住居として再生可能です。
資産価値を維持しながら、地域に新たな人の流れや活気を生み出す場となるでしょう。
廃業旅館を民泊として活用するメリット

旅館を廃業するのではなく民泊へ転用することで、既存の資産を活かしながら効率的な運営へ切り替えることが可能です。
主なメリットは以下の通りです。
- 資産価値を生かせる
- 無人運営で人件費を抑えられる
- 初期費用を抑えられる
- 運営を代行できる
それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。
資産価値を生かせる
民泊への転用は、建物の価値をそのまま活かしながら再スタートできるのが大きな魅力です。既存の客室や設備をそのまま使えるため、大規模な改修や解体をせずに済むのもうれしいポイントです。
さらに、旅館ならではの魅力も強みになります。広々とした和室や趣のある庭園、独特の建築様式は、体験を大切にするゲストにとって特別な魅力となり、他の宿泊施設との差別化にもつながるでしょう。
無人運営で人件費を抑えられる
民泊は無人運営ができるため、人件費の削減につながります。
スマートチェックインやオンライン対応を導入することで、フロントでの対応を減らすことができます。少人数でも運営できるため、人手不足の対策にもなります。
初期費用を抑えられる
新規で宿泊施設を立ち上げる場合に比べ、初期費用を抑えやすいのも魅力です。
既存設備を活用できるため、大きな投資をせずにスタートできます。必要に応じた最低限の改修で運営を始められる点は大きなメリットです。
運営を代行できる
民泊は運営を外部に委託できるため、オーナーの負担を減らせる点もメリットです。集客や予約管理、清掃、ゲスト対応といった業務を専門業者に任せることで、手間をかけずに運用できます。
オーナー自身が現地に常駐する必要がないため、遠方に住んでいる場合や他の事業をしている場合でも対応しやすいのも魅力です。
廃業旅館の活用方法に迷ったらBreakにご相談を

旅館の廃業には複雑な手続きとコストが伴います。一方で民泊や他業種への転用、売却をすることで、新たな収益源として活かすことも可能です。大切なのは、施設の状況にあわせた最適な出口戦略を検討することです。
「Break」では、廃業に悩むオーナー様に向けて、民泊転用のご相談も承っています。活用方法に迷った際は、ぜひお気軽にご相談ください。
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